スポットライト:COVID-19、中国、遠隔医療

「外出制限」、「ソーシャル・ディスタンス」、「ニューノーマル」などは、パンデミックの流行語となりましたが、患者にとって外出制限は治療、診断、フォローアップなどのために医師と直接面会できなくなるという大きな不安を生みます。そのため多くの医療提供者と患者は、パンデミックの最中に必然的に遠隔医療に頼るようになりました。

COVID-19の製薬業界への影響は刻々変容しています。本考察は、2020年5月12日現在の状況に基づいています。

中国はどのように遠隔医療を普及させたのでしょうか?

中国のCOVID-19対応戦略では、既存のイニシアチブを活用して、新たなテクノロジーの使用を拡大し、遠隔医療を促進した点が重要です。中国全土の都市は、ウイルスの蔓延を制限し、地元の医療従事者の不足をサポートするために遠隔医療を適用し、その多くはCOVID-19の対応に当たっています。医療リソースへのオンラインでのアクセスが可能になり、病院の負担が軽減され、直接診療を受けられない、または受けたくない患者の支援を継続できます。

COVID-19の流行以前から、中国は全国的遠隔医療ネットワーク構築計画の概要を策定していました。2018年に開始された野心的な「インターネット+ヘルスケア」イニシアチブにより、医療機関は一部の一般的な疾患および慢性疾患などの診断ならびにその他のサービスをオンラインで提供できるようになりました。市場は急速に反応し、さまざまなヘルスケアサービスプラットフォームやテクノロジー企業が出現しましたが、患者や医師は懐疑的で、またこれらのチャネルを通じて提供される医療の保険償還の欠如などの体系的な障壁もあり、普及は限定的なものにとどまっていました。

COVID-19の流行を受けて、公立病院の負担軽減を目的とし「インターネット+ヘルスケア」イニシアチブが再び展開されました。オンラインサービスに対する主要な構造的障壁に対処するため、国民健康委員会は、COVID-19危機の際の「インターネット+」償還の促進に関するガイダンスを発表し、有資格者によるオンライン医療サービスの保険償還方針を改善しました。武漢(および後に浙江省、江蘇省、広東省)の指定された公立病院が提供するオンラインサービスは、オフラインサービスと同じレートで償還されるようになりました。²

オンライン医療サービスプラットフォームも、このポリシー変更の恩恵を受けました。2月26日、WeDoctorは、武漢医療安全局の医療保険支払いが可能な最初のオンライン専用の医療プロバイダーになりました。3,4

天津医療安全局もまた、WeDoctorの償還チャネルをアップデートしました。5高血圧、糖尿病、慢性重症肝炎、肝硬変などの10種類の重症慢性疾患のサービスと処方箋は、オンラインでの払い戻しが可能になりました。6

これらの措置によって、遠隔医療、薬物処方、償還、薬物送達などの中国でのオンライン医療サービスの問題がなど解決され、遠隔医療の実用性が大幅に改善されました。

WeDoctorは中国で最大の医療プラットフォームの1つであり、オンライン診断・治療のライセンスを取得した最初の企業です。

WeDoctor:オンライン医療とCOVID-19

従来型の病院とオンライン医療プラットフォームは、政府のサポートを受けて、双方ともに市民にCOVID-19関連サービスを提供する上で重要な役割を果たしてきました。

WeDoctor7は1月23日、COVID-19のリアルタイムレスキュープラットフォームを立ち上げました。COVID-19に関する無料オンライン相談、心理相談、近隣の利用可能な診療所の情報、漢方薬相談、医師間の遠隔相談を提供します。

数字で見るWeDoctor

2020年4月26日現在

0百万人
の患者がWeDoctorプラットフォームを通じて医師の診察を受けました
0
の医師がWeDoctorを利用して診療を行いました
0 百万回
の診療サービスがWeDoctorを通じて実施されました

WeDoctorは武漢のために、この特別な救急チャネルの開設に加えて、オンライン処方、医療保険の払い戻し、一般的な疾患を抱える50,000人を超える人々への薬の配送など、合理化されたワンストップサービスも提供しています。8

WeDoctorは、COVID-19の危機への取り組みを支援する唯一の総合オンライン医療サービスではありません。JD Health、Ali Health、Chun Yu Doctor、DXY、Ping An Good Doctorなどの他のオンライン医療プラットフォームでも、診療サービスが劇的に増加しています。WeDoctorとJD Healthはどちらも海外のCOVID-19患者に無料の遠隔相談を提供しています。これらのプラットフォームから収集されたデータは、過去数週間の使用量の急激な増加を示しています。

オンラインヘルスケアプロバイダーのリソースとは別に、従来のオフライン病院も独自のアプリでオンラインクリニックを立ち上げ、診察、慢性疾患患者のフォローアップ、処方箋と薬などの配送など、外来サービスの機能の一部をオンラインに移行しています。患者は、外出することなく薬を入手できます。これは、安全のために外出制限をして家にいる私たちにとって、画期的なことです。9-13

危機に直面した中国が遠隔医療の利用を迅速に推進するのに有益だったことは何でしょうか?

5Gテクノロジーを含む新興テクノロジーの利用を加速することで、中国は従来の遠隔医療機能を超えることが可能になりました。中国は、COVID-19への取り組むだけでなく、診療範囲の拡大、ひいては患者数の拡大のために、遠隔医療の利用を開始しました。

COVID-19の世界的流行以前は、中国では遠隔医療サービスへの5Gの適用は、理論上のことにとどまっていました。政府の支援もあり、武漢の地方病院、たとえば羅山山や雷神山病院は、大手テクノロジー企業2社ファーウェイ(Huawei)、ZTE、および3大電気通信事業者–中国電信(China Telecom)、中国移動通信(China Mobile)、中国聯通(China Unicom)−と協力しました。このコラボレーションの目的は、産業用モノのインターネット(IoT)アプリケーションと5Gロボットを展開することでした。14 これらのテクノロジーにより、リモートCTスキャン、遠隔看護、リアルタイムの集学的診察、および手術が実現しました。

3月2日、5GモバイルCTモジュールは、湖北省黄崗市の広州総合病院で最初に使用されました。同日、四川大学の西中国病院は、5G +リモートCTシステムを介して、広州総合病院の患者106人に対してリモートCT検査を実施しました。15COVID-19の診断が5G +リモートCTシステムによって行われたのはこれが同州で初めてでした。5Gロボットは、病院の消毒、医療用品の配送も担っています17

このパンデミックで迅速な5G適用の加速化が必要となり、5Gの地位が強化されました。したがって、中国政府のCOVID-19以降の生活のための「新しいインフラストラクチャー」の開発計画において、5Gネットワークとデータセンターは支出計画の最優先事項となっています。現在、中国移動通信は50都市で5Gを提供しており、2020年に少なくとも250,000の5G基地局を構築する予定です。中国聯通(China Unicom)と中国電信(China Telecom)も協力して、全国で50,000の5G基地局を構築しています。中国は5Gアプリケーションで主導的な役割を維持することが期待されます。18

「5Gのリモート送信により、遠方にある病院のCTスキャナーをリアルタイムで遠隔操作できます。」

四川大学西中国病院医師

結論

中国では、COVID-19がオンライン医療の大幅な革新を促進し、さらに重要なのは、何百万人もの患者と医師が遠隔医療の潜在的な利点を実体験したといえることです。パンデミックによって、既成の医療慣行が新たなテクノロジー対してオープンになるということが、少なくとも一時的に可能になりました。パンデミックが継続・拡大するにつれ、研究室における概念的な存在だった革新的技術が現実の世界へと流入し、現実世界に晒されることで、革新にとって非常に重要な「現実世界への露出と経験」が得られるケースが見られるようになってきました。特に中国のケースでは、アストラゼネカ、ファイザー、ノバルティスなどの製薬会社と、テンセント、アリババ、DXYなどのテクノロジーリーダーとの間の既存のパートナーシップが新しい状況にどのように対応し、患者中心のプログラムと患者データベースの新たな牽引力を見出す可能性があるかは、私たちにとって興味深い問題です。世界中で、さまざまなヘルスケアシステムが製薬業界やテクノロジー業界のリーダーと提携して、質の高いヘルスケアをリモートで提供するという継続的な課題に対する独自のソリューションを実現する方法を検討しています。

一方で、長期的な償還状況やオンライン医療サービスの規制に関する疑問が依然として浮上しているため、リモートで患者を包括的に診断および治療するには、引き続き限界があることに注意することが重要です。現在のパンデミックという例外的な状況の先にどのようなことが起こるかについては、最大の問題は、対面ケアが再開されたら、患者と医師が遠隔医療サービスをどのように評価するかにかかっています。遠隔医療は将来的に、より優れたスタンドアロンサービスになるというより、むしろ従来の医療システムとの包括的統合に向かって進んでいくことが期待されます。

著者フローラ・ティアン、シニアコンサルタント、ディアラス 中国

フローラは、ライフサイエンス分野で8年以上の経験を持つ、上海を拠点とするシニアコンサルタントです。さらに5年以上の企業レベルの内部コンサルティングの経験があり、中国と海外市場の状況に焦点を当てた企業開発戦略をサポートしました。主な専門分野は、NPP、国際的なM&Aサポート、国際的なCI、コマーシャルエクセレンス、MCM、運用の最適化、価格設定と市場アクセス戦略、製品管理などです。また、前臨床段階、臨床段階から新薬発売後の市場に至るまで、医薬品の研究開発と商品化における深い専門知識があります。治療領域の経験は、免疫学、腫瘍学、乳がん、2型糖尿病、多発性骨髄腫など、多岐にわたります。

著者 ゾーイ・フアン、アソシエイト、ディアラス中国

ディアラスに入社する前は、エール大学の慢性疾患疫学でMPHを取得しました。オンコロジー、皮膚病、糖尿病に関する疫学研究設計に携わってきた彼女は、価値のある違いを生むインサイトを得るため、さまざまなTAを素早く、そして深く掘り下げる方法を学びました。また、間葉系幹細胞と炎症に関する基本的な医学実験の経験があります。ディアラスに入社して以来、ゾーイは、保険償還状況の評価と中国の製薬業界の主要トレンドの特定において中核的な役割を果たしてきました。

協力 リサ・ケント、ディアラス ロンドン シニアアソシエイト

リサはロンドンを拠点とするシニアアソシエイトで、商業戦略、新薬発売計画、ライフサイクル管理で2年の経験があります。ドイツの製薬業界での経験を生かし、オンコロジー、感染症、希少疾患、神経科学、個別化医療など、治療分野全体にわたる主要な戦略的決定において、世界各地の製薬企業をサポートしています。最近では、遠隔医療から診断に至る一連のCOVID-19プロジェクトを監督し、高い不確実性に直面するクライアントが成功するための戦略の適応を支援しています。リサは、ケンブリッジ大学のがん医薬品開発のPhDと免疫学の修士号を、マンチェスター大学で医学生化学の学士号を取得しています。

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Julie Munch Khan – Deallus Chief Commercial Officer

ジュリー・ムンク・カーン, 最高商務責任者
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参照

1. 国家医保局 国家卫生健康委联合印发《关于推进新冠肺炎疫情防控期间开展“互联网+”医保服务的指导意见》http://www.gov.cn/xinwen/2020-03/03/content_5486260.htm 2020.03.03
2. 国家医疗保障局印发《关于完善“互联网+”医疗服务价格和医保支付政策的指导意见》http://www.nhsa.gov.cn/art/2019/8/30/art_14_1705.html 2019.8.30
3. 武汉市为微医互联网总医院开通医保支付https://m.chinanews.com/wap/detail/zw/business/2020/02-26/9105030.shtml 2020.02.06
4. 医保局规定互联网医院开具线上处方,定点药店频繁接单业务忙https://mp.weixin.qq.com/s/YlfImXjM2RlDsHMDCTmjeA 2020.03.13
5. 武汉等10多个城市紧急开通在线问诊医保,互联网医疗最大瓶颈在疫情期间纷纷打通https://zhuanlan.zhihu.com/p/109399517 2020.02.27
6. 疫情推动线上医疗,互联网复诊纳入医保支付打造“医联成都”模式https://news.yaozh.com/archive/28797.html 2020.03.04
7. 4万名医生在线、访问量过亿,揭秘远程医疗背后的技术https://mp.weixin.qq.com/s/8jlRgRCOEmSEm-wJ5F9h4A 2020.03.06
8. “互联网+医疗” 居家隔离也能看医生 http://paper.people.com.cn/rmrbhwb/html/2020-04/07/content_1980395.htm 2020.04.07
9. 一批批“互联网医院”爆发式落地,疫情后新的风口在这https://www.yicai.com/news/100549005.html 2020.03.15
10. 我市多家医院开通线上问诊http://www.zsnews.cn/health/index/view/cateid/401/id/638640.html 2020.03.25
11. 广东多家医院推出免费线上问诊 http://www.gd.xinhuanet.com/newscenter/2020-01/27/c_1125504748.htm 2020.01.27
12. 浙江多家医院开通实时免费网上问诊服务http://www.xinhuanet.com/2020-01/27/c_1125506017.htm 2020.01.27
13. 陕西多家医院开通线上诊疗 疫情中爆发能否改变传统看病习惯?http://news.hsw.cn/system/2020/0309/1163822.shtml 2020.03.09
14. 疫情之下,远程医疗将出圈?https://mp.weixin.qq.com/s/eLBS5pg8xBs0aC1hyCpsDw 2020.02.07
15. 远程医疗支援“升级”:5G+远程CT扫描应用于新冠肺炎诊疗 http://www.xinhuanet.com/politics/2020-03/04/c_1125662616.htm 2020.03.04
16. 5G-aided remote CT scans used to diagnose COVID-19 patients https://news.cgtn.com/news/2020-02-27/5G-aided-remote-CT-scans-used-to-diagnose-COVID-19-patients-in-Chengdu-OqOtFAMLHW/index.html 2020.02.28
17. 热点新闻:12套机器人全天候服务 全国首个智能方舱医院项目交付 https://mp.weixin.qq.com/s/O1d45TLXUAhm71y3iyDelw 2020.03.09
18. China’s economy was hit hard by the pandemic. Its 5G ambitions could be crucial to its recovery. https://www.scmp.com/tech/policy/article/3077199/chinas-economy-was-hit-hard-pandemic-its-5g-ambitions-could-be-crucial 2020.03.28
19. 千亿“慢病管理”市场很诱人,跨国药企八仙过海 https://www.huxiu.com/article/291727.html 2019.03.29

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