直接比較試験の増加

著者:ミッシェル・ブロム(プリンシパル)

医薬品市況は渦巻く大海です。新しいトレンドによって、絶えず新しい波が生まれ業界自体を新しい進路へと放り出します。今日、業界に大きな変革をもたらす試験が、殻を破って影響力ある比較エビデンスを生み出すために使用されています。これが、直接比較試験であり、競合する薬剤を試験するための有力なメカニズムであることを証明しているところです。仕切りに市場シェアを広げようとしている既存企業にとって、この試験戦術は莫大な企業利益を約束させるものです。

それほど大昔ではないですが、区別化させる手段としての直接比較試験の概念は、その考えが却下されていた以前の状況下では、初回の戦術的企画会議で受け入れられることは決してなかったでしょう。多くの治療領域は、大きい市場シェアのために危険を犯して飛びつくほど十分に人気でも競合的でもありませんでしたし、また、この試験の利用を駆り立てるだけの直接比較試験の成功例も不足していました。
さて、違う視点で見てみましょう。小さな小さな欠片の市場を求めて争う製品たちで埋め尽くされた肩と肩がぶつかり合う飽和状態の市場で、製薬企業は彼らのシェアを少しではなく大いに成長させるための戦略を求めています。
安全性と有効性を直接比較することによって、直接比較試験は製品自体を打ち消しながら他から区別化させる方法として役立ちます。この試験に限っては、飽和市場をそのまま維持させるために、ますます重要になっていくでしょう。

飽和市場での直接比較試験

治験薬を既存のスタンダード治療と直接比較させる場合、有力な情報が明らかになります。そして、前にも述べたとおり、僅かな成長率だけでは成功に必要な市場シェアを獲得するのに十分でないような飽和状態の超競合的市場において、このインテリジェンスは、一層有力なものになりうるでしょう。この市場の第一症例が、関節リウマチ(RA)領域でした。

様々な治療法で混みいった関節リウマチ(RA)領域は大きな市場トレンドの特に代表的なものです。多様なRA薬剤の相対的な有効性と安全性の特性評価をする中で、知識や情報の違いに格差をつけていく方法がまだ行われています。従来のメタ分析法では相対的効果を比較する能力に限界があります。この状況がRAに直接比較試験を利用するための肥沃な土地を与えました。そして、多くの市場に当てはまり、よって直接比較試験は他の似た混雑した治療領域でますます使用されるようになるでしょう。

直接比較試験の種類

優越性試験

  • ある薬剤介入が他剤よりも優越であったと証明するためにデザインされたもの。

  • 被験者数の規模は事前に指定された最小で臨床的に重要な差異を基にしています。

  • もし優越性を証明できなかった場合も、薬剤の認可はまだ残っています。もし優越性を証明できれば、薬剤は競合優位性を手に入れることができます。

同等性試験

  • 2つの介入の効果が、事前指定されたマージン内で、同じであるかどうかを試験するようにデザインされたもの。

  • 純正な同等性試験には、大規模の症例数を必要とし、滅多に利用されません。

非劣性試験

  • 一つの介入の効果が実対照薬の介入より劣っていないかどうかを図るようにデザインされたもの。

  • 利害のリサーチ・クエスチョンにより合わせ易く、患者数が少なくて済むために、同等性試験よりも多く利用される傾向にあります。

  • もし優越に満たない場合や見込めない場合に利用される。

関節リウマチ領域における直接比較試験

Head to head trials in the RA space
ディアラスは登録商標です。他の全ての商標は個々の所有者の所有物です。

ご覧の通り、直接比較試験は、大規模の市場シェアを争い、製品がその競争に勝ち抜くことを望む製薬企業によって利用されています。理由は明白です。新たに果たす直接比較試験データの利用は、既存の薬物治療の大量の漠然としたエビデンスを目にした決断者にとって、力強い有価物と成り得るでしょう。
それ以外の明白なポイントは何でしょう。それは、リスクです。もし製品が直接比較試験の対象に、または競合薬を土俵に持っていく薬剤となるならば、そして、結果製品が有効な薬剤とはいえないと認められた場合、市場シェア拡大への道のりは非常に険しいものになると言えるでしょう。

結論

直接比較試験は、物議を醸す対プラセボのランダム化比較試験やメタ解析の不満を乗り越えるポテンシャルを持っています。医師や保険者は、この試験を患者や支出にとって最良の選択が決断されるよう導くために使用することができます。規制当局者は、薬剤承認のプロセスにこの試験を考慮に入れ、製薬企業は、売上げ向上にこの試験を使いうるでしょう。

要するに、直接比較試験は、混雑した市場、溢れる製品の中、しっかりした差別化の必要性を求めて作られました。そして、この試験方法は、ますます治療領域で見かけられるようになる市場といって間違いないでしょう。以前の直接比較試験は、市場シェア拡大の戦術として誰も目に留めていませんでしたが、もはや無視できないものとなりました。この試験はあなたが利用すべきと考える方法であるかどうか、競合相手があなたに対抗するために利用しうる手段であるかどうか、混み入った市場で製品を扱う者は誰もが、どうやって直接比較試験が資産戦略や市場シェアや成功に影響を与えるのかという難題に出くわします。

参照(英語)

  1. 直接比較試験の種類: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18537788
  2. 直接比較試験の例
    1. オレンシア対ヒュミラ
      • https://ard.bmj.com/content/73/1/86
      • https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00929864
      • https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23169319
    2. シムジア対ヒュミラ
      • https://www.managedhealthcareconnect.com/articles/first-head-head-superiority-study-compares-cimzia-humira-ra
    3. アクテムラ対ヒュミラ
      • https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23515142
      • https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(13)60250-0/fulltext
Deallus Head-to-Head Trial Awareness